サイディング以外の3つの外壁材のそれぞれの特徴を紹介
国内の住宅で使われている外壁材の7割~8割はサイディングになっていますが、外壁材に使われているものはサイディングだけではありません。
この記事ではサイディング以外の3種類の外壁材の特徴と、それぞれのメリットデメリットを紹介します。
1.モルタル
モルタルはセメント・砂・水で練り込んで作られる建築材料です。
モルタル外壁は30年ほど前まで、日本の住宅における外壁の主流として多く用いられてきました。
近年ではサイディングによる外壁がメインとなり、モルタルを採用する家は少なくなっています。
ただ、モルタル外壁ならではのメリットもあるため、あえて導入するという方もいます。
モルタルのメリット
1950年以降にモルタル塗りの壁が広まった要因として挙げられるうちのひとつに、防火性能の高さがあります。
セメントや砂を原材料としているため燃えにくく、一定の厚さに達すると防火構造や耐火構造となることが認められています。モルタルは不燃材料として定められている為、高い耐火性能・耐久性があると言えます。
・金属性の外壁材のように熱くならない
金属性の外壁は、太陽光によって温度が上昇し、室内の温度上昇にもつながります。そのため、高価な遮熱効果のある塗料を塗る必要があります。
モルタルの場合は、金属のように温度が上昇することはありません。
遮熱効果のある塗料を塗ることでさらに効果が増し、夏場の冷房にかかる経費を節約します。
・職人の手作業で仕上げられる場合が多いので、デザイン性や自由度が高い。
モルタルには仕上げ方法にも種類があり、施工方法や混ぜる砂・繊維などの素材を組み合わせることでたくさんのパターンを作ることができます。
サイディングのような繋ぎ目が必要ないため、見た目も美しく、複雑な形状の建物であっても比較的簡単に対応することができます。
特に左官仕上げなどは、様々な風合・質感を出すことができ、手仕上げならではの温かみもメリットと言えるでしょう。
モルタルのデメリット
モルタルの防水性能は高くありません。何度も乾燥と湿潤を繰り返すような環境下では、ひび割れや剥がれ等を生じやすくなります。ひび割れや剥がれは部分から壁の中に雨水がしみ込み、建物の寿命を縮める原因となるのです。
少しのひび割れなら防水スプレーなどで対処できますが、ひび割れが進行してきたら塗り替えが必要になります。
・汚れが目立ちやすい
外壁は、厳しい風雨に晒され続けると次第に汚れが生じてきます。風合いや手作り感を出すために表面に凹凸をつけたモルタル外壁は、他の外壁材と比較してホコリが溜まりやすくなります。仕上げも淡い色であることが多く、より汚れが目立ちやすいため、計画的にメンテナンスをする必要があります。
・仕上げる職人の技術力によって、質に差が出やすい。
細かな部分や最終的な左官仕上げ、ローラー仕上げには職人の技術が必要です。また、材料によっては水分の吸収性に差があり、それも考慮して作業しなくてはならないなど、技術と経験が必要になります。モルタル外壁の出来上がりの良し悪しは職人の腕に大きく左右されるため、出来上がりの品質にばらつきが出るおそれがあります。
また、モルタル仕上げを外壁に施す家が減少していることや賃金の低下などの理由から、左官職人も不足しています。
2.タイル
タイルの全外壁材に占める割合は、たった3%。ただしこれは、タイルが外壁材として劣っているという意味では決してありません。
一口に外壁タイルと言っても、様々な種類のものがあります。
代表的なサイズは元々レンガの長手面のサイズを基準に作られた
「二丁掛(227x60mm)」や、「ボーダー」と呼ばれる二丁掛より細いサイズのもの、最近では300x150mmといった少し大きめのサイズなども販売されています。
色は白から黒の無彩色や、一時流行した赤レンガ色まで、豊富なカラーバリエーションが揃っているのも特徴です。
また、タイル素材の外壁の建物が少ない今、逆にタイルを取り入れることは他との差別化にもなるでしょう。
タイルのメリット
高温で焼き固めたタイルは、素朴な味わいのものから、凝ったデザインまで様々で、外壁として設置した時の風情は格別です。焼き物と同じように、タイル一枚一枚は「世界に一枚しかない」ものになります。
特にタイルを模したサイディングと本物のタイルを比較すると重厚感や高級感に違いが出ます。
長い付き合いとなる自宅の外観はとても重要な要素です。機能性もさることながらデザインの部分に強いこだわりを持っている方なんかであればタイルを選択する大きなメリットがあると言えるでしょう。
・耐久性が高くメンテナンスコストが安い
タイル素材を使った外壁はメンテナンスフリーという表現をよく見かけます。実際のところタイルもメンテナンスは必要です。
ただ、メンテナンスが必要なスパンが長く、メンテナンスコストもかなり抑えられるというのが、タイルを選ぶ際のメリットです。
タイルは非常に硬い性質のため、砂などが風で吹き付けてもほとんどキズはつきません。
またほとんど吸水をしないため、凍害の心配もほとんどありません。
しかし、タイル以外の下地や目地などは劣化してしまうため、その部分のメンテナンスが必要になってきます。
タイル自体は耐用年数も40年と長く、メンテナンスは一般的にサイディングの半額程度で済むと言われています。
・デザイン性が高くラインナップが豊富
タイルを外壁に選ぶのメリットとして、ラインナップが豊富という点があります。
レンガ調ひとつとっても、高級感のあるダークブラウンから、ヨーロッパの街並みを連想させるようなブラウン、青空に生えるようなホワイトなど、実現したいコンセプトによって様々です。
また、タイルは汚れが付きにくいという特徴もあるので、普通は汚れが目立つと思って敬遠しているような色も思い切って選べます。
せっかくなら一生ものの外壁を選びたい!とびきりおしゃれな外壁にしたい!そんな方にはタイルの外壁があっていると言えるでしょう。
タイルのデメリット
大きなデメリットとして考えられることはイニシャルコストが高くなりがちな点。
材料も安く、施工も簡単なサイディングに比べて、タイルを用いた施工は初期費用がどうしても高くなってしまいます。
施工の内容や素材の選択にもよりますが、一般的にサイディング施工の倍ぐらいのイニシャルコストがかかると言われています。
イニシャルコストという点では、確かに外壁タイルは高いです。
ただ、メリットにある耐久性の高さ、メンテナンスの頻度を考えると将来的なトータルコストはサイディング等と比較した際にもそれほど高いものではありません。
自分の子供も同じ住宅で今後も生活をしていく、など長い目線で見るのであれば気にならない部分になると言えるでしょう。
・剥離の可能性
外壁タイルを使用する場合、気になるのがタイルの剥離。
剥離・落下はまれではありますが実際に起こりえる事ですので、外壁タイルにした場合のデメリットと言えます。
施工した職人の腕によっては浮きや剥がれが発生することもあります。 タイルの施工にしっかりと実績がある優良な施工業者であれば浮きや剥がれなどのリスクはぐっと下がります。
施工をする際には依頼をする業者の施工事例などもしっかり確認をし、信頼できる業者を選ぶことでリスクを最小にする必要性があります。
3.ALC
ALCは(Autoclaved Lightweight aerated Concrete)
の頭文字をとった名称になり、高温高圧蒸気養生した軽量気泡コンクリートのことです。主成分は珪石、セメント、生石灰などが主原料になり、ALC内部に気泡を含んでいるのが特徴です。
コンクリートと聞くと硬くて重いというイメージを持つ方もいるかもしれませんが、ALCは内部に気泡の穴が空いており、水に浸すと浮くほど軽量な素材です。一般的には通常のコンクリートの約1/4の重量となっています。
外壁だけでなく屋根や床、間仕切りなどに使用される建材で、住宅以外にも高層ビルや中低層ビル、ショッピングセンターや倉庫など、さまざまな建物の構造材料として使われています。
ALCのメリット
定期的にメンテナンスをすれば、50年程度は外壁張替えなどの大規模工事が不要なほど耐久性が高いのがメリットです。
また地震にも強いため、メンテナンスをしっかりと行い、一つの家に長く住むのであればぴったりな外壁材と言えるでしょう。
・断熱性・耐火性に優れている
ALC外壁は内部の気泡が空気の層を作るため、熱伝導率が低く断熱性が高い素材です。
通常のコンクリートの約10倍も断熱性があるといわれていることから、断熱材と併用し断熱性を高めることで夏場や冬場などのエアコンの使用率を減らし電気代の節約にも期待できます。
併せて燃えにくい耐火構造を有しているため、耐火性・防火性も優れています。
また、無機質な原料で作られていることから、万が一火災が起きた場合にも有害物質を発生させません。
・軽量で遮音性が高い
ALC外壁は通常のコンクリートに比べて重量が1/4程度しかないのが特徴で、軽量でありながら強度があり、遮音性が高いメリットがあります。
また、内部の気泡が音を吸収するため、騒音のある環境でも住宅内に音が伝わりにくく、住宅内の音も外に漏れにくくなる為騒音トラブル等になりにくい点もメリットと言えるでしょう。
ALCのデメリット
主成分がセメントであるため、吸水性が非常に高い素材です。
その為外壁表面を守る塗膜が劣化すると、ALC内部の気泡に水が浸入→冬場の寒さによって内部の水が凍結→凍結により水が膨張しひび割れが発生といった現象が起こり、建物自体の耐久性を低下させる恐れがあります。
前述のとおりALCパネル自体は耐久性の高い素材ですが、ALCパネル自体やシーリングの劣化を防ぐためには塗装をして防水性を高める必要があります。
・イニシャルコストが高い
タイルと同じようにイニシャルコストが高くつくのがデメリットとなります。他の外壁材と比較すると新築時の平米当たりの単価が高額となっています。
ALCは外壁材の中でも機能性が総合的に高い分、初期導入にかかるコストはかさみますが、タイルと同様で長く住んだ時にかかってくるメンテナンス費用などを含めたトータルコストで考える必要があるでしょう。
4.まとめ
全体的に今主流になっているサイディングより、耐久性に優れていてメンテナンスコストが低く、反面初期コストが高くつく外壁材が多かった印象です。
サイディングが主流になってきたのは1990年頃からで、それまではモルタル外壁が主でした。今後平均寿命の延伸に伴ったライフスタイルの変化などで今回紹介した外壁材の増加も十分あり得えます。
イニシャルコストだけではなく、今後のライフプランにあわせたランニングコストも含めて考えた外壁材の選択も選択肢の一つではないでしょうか。
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